底なしに愛を欲する人~境界性パーソナリティ障害~

特徴その1

【最高】と【最低】の間を、めまぐるしく行ったり来たりします。

チェンジマーク

①気分において

昨日は最高にハッピーな気分だったのに、今日は最低などん底の気分、というような事がしばしば起こります。そして、どん底の気分になると全てが無意味となり、自分は生きる価値がないとまで考え、死にたいという思いに囚われてしまうこともあります。【うつ病】はそのようなどん底の気分が連続してずっと続く状態ですが、境界性パーソナリティ障害のうつ状態は、うつ状態の合間に楽しい気分の状態もあるのが特徴です。
毎日の気分の振れ幅が両極端で激しいので、本人も自分自身の感情に振り回されて、とても疲れてしまいます。

②対人関係において

深く深く愛情に飢えていて、自分に愛を与えてくれる人を常に求めています。ですから「この人こそ自分が求めていた相手だ!」という相手に出会うと、その人を極端に理想化したり、親の代わりをその人に求めたりします。そして、もっともっと愛をくれと、どんどん依存していきます。
ですが、そんな状況に相手が支えきれなくなると、見捨てられる不安に取りつかれて必死に相手を引き留める行動を取ります。それでも相手が離れてしまうと大きく失望し、と同時に「裏切られた!」という激しい怒りを抱えます。
このような、依存から怒りへの反動は両極端でとても激しく、言葉の攻撃だけではなく、相手が困るような行動に出る場合もあり、良い結果にはなりません。いつも両極端に振り切れる対人関係のパターンを繰り返すので、本人も周りの人も傷付き、どんどん疲れていきます。

特徴その2

自傷行為と自殺企図

落ち込む

境界性パーソナリティ障害の根っこにあるのは【底なしに愛情に飢えている】という心理と【自分は値打ちのない存在だ】という心理です。その心理が起こす、困った行動の最たるものが、自傷行為と自殺企図です。これらの行為は命を直接危険にさらすので、周囲の人たちは「本当に死んだらどうしよう」と不安になり、一時的に彼らに愛を注ぎます。ですが本人が元気になると、いつまでも機嫌を取る訳にはいきません。するとまた本人は、自傷行為や自殺企図を繰り返します。
このように書くと「じゃあ自傷行為や自殺企図は芝居なの?」と思われてしまうのですが、その行為の背後には、自分という存在を消し去ってしまう事を心から望んでいる場合もありますので、注意が必要です。

境界性パーソナリティ障害の人にとって、生きていく事は当たり前ではありません

彼らは日々、生と死の間で綱渡りをするような、ギリギリの状態で生きています。自分の命を簡単に差し出してしまえるのは、自分を値打ちのない存在だと思っているからです。値打ちがないだけでなく、汚らしい、醜いとさえ思っています。そして、値打ちのない存在だから、自分を安っぽく扱ってしまいます。例えば、少しでも優しい言葉をかけてくれる相手にすぐに身体を許してしまったり。また例えば、薬物乱用や窃盗のような法律に触れるような行為に走ってしまったり。

原因

母と娘

親との関係性が大きな原因のひとつです。親に愛されて、安心安全な環境で育った子どもは、徐々に親から卒業して自立へと向かいます。ですが、必要な時期に愛が貰えなかったり、安心安全な環境が与えられなかったり、逆に親がいつまでも支配してきて適切な時期に親から切り離されなかったりすると、子どもは上手く親を卒業する事が出来ません。いつまでも親に愛を求めたり、かなりの年齢になっても親へのこだわりを引きずり続けたりします。境界性パーソナリティ障害の人は、上手く親を卒業出来ていないのです

接し方のポイント

「他人が私を満たしてくれるのではない。私が私自身を満たすのだ。」と、本人がこころから理解して決意する事が、この障害の乗り越えるためのポイントです。その為には、継続した医療とカウンセリングが大事になってきます。日常生活で困っていたら、まずはきちんと医療に繋げて下さい。

その上で、見捨てられ不安の強い彼らにとって「自分を見捨てず、長く変わらない気持ちで接し続けてくれる人が居た」という経験が、障害の克服に向かわせます。その為には、周囲の人が彼らの激しい気分の変化に巻き込まれて、共倒れにならないようにする事が大事です。
例えば、彼らに同調し過ぎると「最初のうちは本人の話を熱心に聞いてあげて力になるよと言いながら、本人が『もっともっと愛をくれ!』とどんどん依存してきたら、疲れてしまって投げ出してしまった。」という事が起こります。そうされて一番傷付くのは、境界性パーソナリティ障害の本人です。「人は結局自分を見捨てるのだ」という価値観を強め、障害の克服から遠ざかってしまいます。

彼らの状態が良い時も悪い時も、一喜一憂し過ぎず、冷静な視点で言葉をかけて気長に見守る、というような一定の態度で接する事。そして「ここまでは出来るけど、これ以上は出来ない。」と、限界を決めてきちんと本人に伝える事。これらが周囲の人が接する際のポイントです。

参考文献
【知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス】厚生労働省
【パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか】岡田尊司 著

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