あなたのこころの中に居る異性~エロスとロゴス~
ロゴスとは【秩序の原理】
ロゴスとは【言語】【理性】【思考】に関わる【合理的であり秩序立った世界】のことです。
言い換えると、一定のルールに従って意味を伝えたり、秩序を作り出したり、またそれらを維持していくような世界のことを言います。思考に近い世界です。仕事の世界もそのひとつですね。
ロゴスは、昔から【男性的な世界】だと考えられてきましたが、昨今は、ロゴスが発達した女性も多く見られるようになりました。昔と比べて、高学歴な女性や仕事を持つ女性が増えたことも、要因のひとつとして挙げられるでしょう。
対してエロスとは【愛の原理】
エロスとは【愛の世界】のことです。
愛には【親子愛】【異性愛】【同性愛】【夫婦愛】や【プラトニックラブ(精神的な愛)】【肉体的な愛】【性的な愛】というものがあり、とても範囲が広いのですが、最大の特徴は【境界がなくなること】。対立が無くなって溶け合ってしまうのが愛の世界である【エロス】です。感情に近い世界です。
この世界では男性的な世界であるロゴス的なもの、つまり「意味」とか「秩序」とか「区別」とかいったカッチリしたものが溶けて、無くなってしまいます。例えば、本当に愛する人と抱き合っていると、溶け合ってひとつになったように感じることがあります。また例えば、親が子どもに持つ無償の愛にも、対立や区別といった線引きはありません。このように、境目が無くなっていくという体験が、愛の世界でありエロスです。
【アニムス】と【アニマ】
世界三大心理学者のひとりであるユングは、このロゴスとエロスの大元の原理を【アニムス】と【アニマ】と呼びました
「女性がこころの中に持っている男性像」を【アニムス】
「男性がこころの中に持っている女性像」を【アニマ】
人のこころには、女性であっても男性的なこころの働きをする部分がありますし、逆に男性であっても女性的なこころの働きをする部分があります。
男性的な働きをする部分を【アニムス】つまり【男性性】ともいい、
女性的な働きをする部分を【アニマ】つまり【女性性】ともいいます。
つまり、
ひとりの女性の中には「アニマ(女性性)」と「アニムス(男性性)」が居て、
ひとりの男性の中には「アニムス(男性性)」と「アニマ(女性性)」が居るということ。
あなたのこころの中には異性が居て、その異性はあなたが生まれた時からずっと、あなたと一緒に生きてきたともいえます。
アニムスとアニマのタイプ
さて、アニムス(男性性)とアニマ(女性性)にも色んなタイプが居ます。
経済・心理学者の林道義氏は、アニムス(男性性)とアニマ(女性性)を6つの型に分類しました。
アニマ(女性性) アニムス(男性性)
1日本的マリア型 父ウロボロス型
2清純乙女型 アドニス型
3姉妹・同志型 兄弟・同志型
4妖精型 魔法使い型
5美魂型 美魂型
6女神型 ロゴスー老賢者型
【アニマ(女性性)の型】:男性がこころの中に持っている女性
1.日本的マリア型
母親から自立していない男性に現れます。「高嶺の花」「マドンナ」といった、成熟した若い女性であり、大勢の男性たちの中で超然としたイメージの女性像です。男性はこの女性像にとても憧れます。
2.清純乙女型
愛らしく清純であると同時に、曖昧さと頼りなさを持つ、お人形さんのイメージです。個性が曖昧で多くの男性に好かれます。日本のアイドル歌手のイメージともいえます。このタイプは「俺についてこい」というような、男性にさらわれるという形でしか、男性と関係することが出来ません。
3.姉妹・同志型
母親からあまり自立しておらず、性的な性質を持っている女性を苦手とする男性に現れます。女性的つまりエロス的な性質が怖いのですね。ボーイッシュなクラスメイト・同志・姉妹というイメージです。ロゴスが発達していて教養があって頭も良く、いざという時には理性的な助言もしてくれる女性、というイメージでもあります。このタイプのイメージを持っている男性は、女性と対等な性的関係を持てない場合もあります。
4.妖精型
あやしげな魅力を持つ女性のイメージです。エロスが大変発達している女性に、このイメージを抱きます。男性を惑わせこころをくすぐるような魅力的な態度に、溺れて転落してしまうという悪い面もありますが、激しいエロスの光を注いで刺激を与えることで、男性が怠惰な日常から目覚めて新たな道を歩むという良い面もあります。
5.美魂型
読んで字のごとく、こころが美しい女性のイメージです。
6.女神型
人間離れしていて光り輝く女神のイメージです。霊的な能力が優れていて、予言をしたり男性が気が付かないような思わぬアドバイスをしたり、知恵を授けてくれたりする女性、というイメージです。ただ、現実にはこのような女性はあまり居ません。
【アニムス(男性性)の型】:女性がこころの中に持っている男性
1.父ウロボロス型
生活能力がなくてどうしようもないダメ男なのに、なぜかほっておけない。独裁的で威張っていて横暴な父親。だけどそれが魅力的で離れられない、というイメージです。
2.アドニス型
弱い息子でダメ息子だけど、可愛くてしょうがなく自分の愛人のように愛している、というイメージです。母親がこういうアニムスイメージを持っていると、息子をいつまでも自分の支配下に置いて可愛がりたい、いつまでも少年のままにしておきたいと考えてしまうので、息子はなかなか自立させて貰えない、という事態を引き起こします。
3.兄弟・同志型
もし、娘が父親に対して何らかの強いコンプレックスを持っていると、恋人に父親をだぶらせてしまい、成熟した大人の男性とは付き合えなくなってしまいます。その場合、エロスが感じられない兄弟のような人と、友達として付き合っていきたいと考えます。知的な会話を楽しむだけでエロティックな話はしない、というイメージです。
4.魔法使い型
あやしげな魅力を持つ男性のイメージです。アニマタイプの「妖精型」のアニムス版がこれです。洗練されたエロスを持つ男性に、このイメージを抱きます。姿や立ち居振る舞いはお洒落でスマート。遊びが上手で面白いことを沢山経験させてくれる男性が、まるで魔法使いのように見えます。ですが、遊び飽きたらあっさり捨てられてしまう、という危険な魅力を持つ男性のイメージでもあります。
5.美魂型
読んで字のごとく、こころが美しい男性のイメージです。
6.ロゴスー老賢者型
理性的でものごとを秩序づけたりする能力が高い男性のイメージです。学問がよく出来る男性というイメージでもあります。その他にも、芸術家・宗教家・教祖といったような、新しい意味を創造する男性というイメージでもあります。
アニマは、男性がこころに持つ女性性のイメージであり、アニムスは、女性がこころに持つ男性性のイメージです。アニムスやアニマについて考えることは、女性にとっては、
「私のこころの中には、どんなアニムス(男性性)が居るのだろうか?」
と考えると同時に、
「私は男性から、どんなアニマ(女性性)だと見られているのだろうか?」
と考える機会にもなり、男性と付き合うにあたっての参考になります。
「この人は私に清純乙女型のアニマをイメージしてるけど、私は違うしそんなのムリムリ。これ以上深く付き合うのはやめよ。」
「私は妖精型ってみられてるなあ。ホントは違うんだけど。まあでもたしかにその要素はあるから引き受けてもいっか。」
「いつもいつも遊び人に惹かれるなあ…と思っていたけど、私の中には魔法使い型のアニムスが居るわ!」
といったように。
またそもそも、アニマ(女性性)がすごく発達した女性であるにも関わらず、何らかの理由でそこを抑え込み、アニムス(男性性)を前面に押し出して生きてきたせいで、問題が生じている女性も沢山いらっしゃるんですよ。
参考文献 心のしくみを探る ユング心理学入門Ⅱ 林道義 著