人にはそれぞれ得意とするこころの機能があります
人間のこころの在り方は、外へ外へと関心が向いていく【外向型】と、中へ中へと関心が向いていく【内向型】に分かれます。
外向型の人は、こころのエネルギーがその人の外側に流れ出て、特にその人を取り巻く人間関係に注目して物事を見ます。例えば、周囲の人が「あの人素敵ね」と誰かを褒めれば、相手の好みと一体化して自分も「ああ素敵だな」と感じてしまいます。
逆に内向型の人は、こころのエネルギーが外へと流れていかず、自分の中にしっかりと溜まって内容を形作っています。それが、自分の考えや感じ方といった基準となっていて、自分の判断に従って外のものを判断します。
例えば、周囲の人が「あの人素敵ね」と誰かを褒めた時に、自分の判断基準に従って「私は素敵だとは思わない」となる場合もあります。
つまり、同じ事実を見ても【外向型】か【内向型】かといったこころの在り方によって、ものの見方は違ってくるという事です。
とはいえ、人はその時々で、外向型になったり内向型になったりするものです。
「何から何まで外向型です!」という人は居ないし、
「一から十まで内向型です!」という人も居ません。
ですか、ユングはこの【外向型】と【内向型】をさらに4つに分類し、各個人それぞれが得意とする心理機能を持っていると考えました。
それが、(1)感覚機能 (2)直観機能 (3)思考機能 (4)感情機能 の4つです。
(1)(2)は、情報を受け取るだけの機能です。
(3)(4)は受け取った情報を判断する機能です。
(1)感覚機能と(2)直感機能は対立関係にあります
ですから(1)感覚機能が得意な人は(2)直感機能が苦手となり、逆に(2)直感機能が得意な人は(1)感覚機能が苦手となります。
(2)感情機能と(4)思考機能は対立関係にあります
ですから(3)感情機能が得意な人は(4)思考機能が苦手になり、逆に(4)思考機能が得意な人は(3)感情機能が苦手となります。
ではここから、それぞれの機能について説明していきましょう。
皆さんはどの機能が得意でしょうか?
【情報を受け取るだけの機能】
(1)感覚機能
五感によって見たり聞いたり味わったりする機能です。
例えば誰かと会った時に「赤い色の服を着ているな」「ロングヘアーだな」「眼鏡をかけているな」という情報を受け取る機能です。ただ情報を受け取るだけなので、好きか嫌いかといったような判断はしません
この機能が優れている人は、家に帰っても、相手がどんな色の服を着ていて、どんなヘアスタイルをしていたのか、受け取った情報を間違わずに思い出す事が出来ます。
逆に、この機能が苦手な人は直感機能が優れているので、相手との会話で素晴らしいインスピレーションを思いつくのに、相手の服装や名前など何も覚えていない、というような事が起こります。
(2)直感機能
人と会った瞬間に、その人の性格や人となりが分かってしまったり、インスピレーションが浮かんだり、よい考えがパッとひらめいたりする機能です。
ですがそれを受け取って語るだけで、良いか悪いかの判断はしません。この機能が優れている人は勘もよく当たります。
【受け取った情報を判断する機能】
(3)思考機能
受け取った情報を論理的に見て、正しいか正しくないかを判断する機能です。
この機能が優れている人は常に論理的・合理的です。感情機能が苦手なので、例えば一つの絵画を見た時に、好きとか嫌いとかどう感じたかを表現出来ずに「わからない」と考え込んでしまったりします。
(4)感情機能
受け取った情報について、好き・嫌い・嬉しい・悲しい・腹立たしいなどと判断する機能です。この機能が優れている人は、自分の気持ちに従ってそのまま生きています。
得意な機能を活かして生きる
進路・職業・結婚など、人生の選択をするような分岐点に立った時だけでなく、普段の生活でも、自分の得意な機能を活かすことを意識すると、生きやすくなります。
例えば感情機能が得意な人は、「本に書いてあったから」「世間がこう言っているから」といって思考で考えて実行するよりも、「好き!」「嫌い!」「楽しい!」といった感情で選択し生きる方が良いのです。思考が苦手機能なのに、色々と考え過ぎるから上手くいかなくなるのです。
また逆に、思考機能が得意な人は、感情で選択することが苦手です。ですから、冷静に考えて選択し生きる方が良い場合が多いのです。
参考文献:ユング心理学入門 河合隼雄 著
心のしくみを探る ユング心理学入門Ⅱ 林道義 著