部下に説教をするとき、その時間が長ければ長いほど【部下は何も聞いちゃいねえ】となります
「上司に3時間、ずっと説教されました…。」
といって、カウンセリングの場でさめざめと泣く、とある会社員男性。確かに3時間説教したくなるようなことをやらかした様子。ですが話を聞くと、上司が言いたいことはあまりこの方のこころには届いておらず、ただ「3時間も説教されて辛かった」という気持ちしか残っていないのです。
こうなると、上司も部下もクソ忙しい時間を割いての3時間の意味…。
説教は、その時間が長引けば長引くほど、効果はありません。
えてして説教の内容というものは、
「キミがミスした点」と
「俺の若かった頃の話」
になりがち。確かにありがたい話ではあるのですが、それらが延々繰り返されるだけになってしまうと、最初のうちは反省してしおらしく聞いていた部下も、だんだんと
「これ、いつ終わるんだろう…」
「いつ解放されるんだろう…」
「もう疲れた…」
「もう勘弁して…」
「飽きた…」
という気持ちでいっぱいになってしまい、肝心のありがたい話からこころが離れていってしまうのです。
そもそも説教というものは、なぜ長くなってしまうのでしょうか?
「部下がやらかしたから」という理由はひとまず置いておいて、上司のこころにどんな動きがあるのか、考えてみましょう。
1.説教をしている上司が「ありがたい話をしている自分」に自己陶酔してしまう。説教をしているうちにだんだんと調子が出てきて、まるで偉い人物が民衆にスピーチでもしているかのように錯覚してしまうんですね。そして説教が止まらなくなる。いわゆる「自分に酔っている」状態です。
2.コミュニケーションというのは感情のやり取りなので、長引く説教に対する「いつ終わるんだろう…」という部下の感情は、上司にしっかり届いています。上司は自分の語るありがたい話が、部下のこころに届いていないのが何となく分かるんですね。そうすると「こいつ分かってねえな。」と駄目出しをしたくなり、これでもかと説教が繰り返され長引いてしまいます。
3.私は管理職を対象としたカウンセリングも行っていますが、たいていの上司は、部下が考える以上に大変な思いを抱えて仕事をしているものです。どんなに大きなストレスがあっても、それを誰にでも愚痴る訳にもいかず、相談する場所がそうある訳でもなく。そうすると、そのストレスが説教という形になり、はけ口として部下に向かう場合があります。説教することで、こころのバランスを取っている状態です。
これらの理由は、上司と部下の関係だけではなく、親と子どもの関係や、先輩と後輩の関係、先生と生徒の関係といったような、いわゆる上下のある人間関係に於いても言えることです。
まあでも、せっかくお互いの貴重な時間を割いて上司が良い話をするんですから、その時間を有意義なものにするためにも『説教は短く!』するのがポイントです。
上司は「同じ話を絶対に繰り返さない。」とこころに決めて「これだけは言っておかねば!」という1点に焦点を絞って部下に話してください。パッと言ってハイおしまい。
その方が、話の焦点がぼやけず部下のこころに強く残ります。その上「仕事が出来る上司だなあ」というような好印象も与えることが出来ます。
そしてもし、部下に長々と説教したくなったら、自分自身のこころを見つめ直してみて下さい。そうして、
「部下のために説教しなきゃと思っていたけど、もしかして自分のストレスが相当溜まっているのかも…」
と気付いたら、部下への説教ではなく自分自身への対策を打つこと。実はそれが、職場の問題解決の早道だったりします。