今までの自分から違う自分に生まれ変わるということは、いったん死ぬようなもの。だから苦しみ、もがくのです。

メンタル不調に陥るときって
「新しい自分に生まれ変わるタイミングがきたよ。」
っていうサインだったりします。だけど「生まれ変わる」って「いったん死ぬ」ようなものですから、変わる決断をするときも変わっていく過程でも、本人はとても苦しむのです。

メンタル疾患の両親の介護を、自分が小さい頃からしてきたという20代の男性。
色んな状況が重なって、ご自身もメンタル不調を発症し、苦しんでおられました。
「生活費を稼がなきゃいけないから仕事を休めない。」と言っているうちに状態は悪化。色んな救済制度を紹介して休職に入って頂き、カウンセリングを継続していました。

そういう状況の中、半年ほど経過したある日を境に、復調に向かいます。
「小学校も中学校も高校もずっと、親のためにやってきました。自分のことは全部後回しにして。早く就職して親を養わなきゃいけないし、親を捨てちゃいけない。だから辛くても休んじゃいけない。それが当たり前だと思っていたんです。だけど、自分の体調が悪くなって苦しんで考えて、ふと思ったんです。俺、ずいぶん頑張ってきたなあ。もういいんじゃないかって。少しは自分のことを考えても、いいんじゃないかって。そうしたら気がラクになってきたんです。」

抑うつ状態から抜けた瞬間です。まさに、ご本人が生まれ変わった瞬間でした。

生まれ変わるというのは、今までの自分の生き方のパターンを変えるということ。行動パターンだけではなく、考え方のパターンも含まれます。
変わるタイミングは、就職・進学・転職・退職・昇進・結婚・離婚・出産・失恋といった、人生の大きな節目にやってくる場合が多いものです。
だけど、長年慣れ親しんできた生き方のパターンを変えるということは、恐らく今までの自分が死ぬも同然なのです。だから相当苦しむし、本当に死にたくなってしまう場合もあります。

私は、死にたい気持ちを「それはいけません!」とむやみやたらと否定しません。
なぜなら「死にたい気持ち」は「生まれ変わろうと必死にもがいている状態」と捉えているからです。自分が自分で変わろうとする力のひとつだからです。
かといって、本当に肉体の死に至っても良い、という訳ではありません。自殺の実行を防ぐために話を傾聴し、クライエントにとってもカウンセラーにとっても、お互いに苦しい話し合いを続けながら、ご本人が「象徴的にいったん死んで生まれ変わろう」と、必死でもがいている時期を支えていこうと思うのです。

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