現代人から古代人に戻る時間を確保する大切さ

こころが辛くて苦しいときというのは、理由があろうがなかろうが、毎日毎日何かしらをぐるぐると考え続けている状態です。そうやってあれやこれやと考え続けることに伴い、怒りや不安もどんどん湧き出てきます。
湧き出てきた怒りや不安は、そのまま構わずほっておけばよいのですが、怒りや不安をしっかりつかまえて、ああでもないこうでもないと考え続けてしまうと、それは研ぎ澄まされた刀となり、怒りや不安の対象が自分であれば、自分自身を刀でめった刺しに攻撃し、怒りや不安の対象が相手であれば、その相手をめった刺しに攻撃します。相手を攻撃することで罪悪感も生まれ、厄介なことに相手を刺したその返し刀でまた、自分自身を刺すことにもなります。

辛い気分を誰かに話したときに「考え過ぎだよ。」と言われることもありますね。
本人だって、言われなくても考え過ぎなことはよく分かっているのです。そんな状況から早く抜けたいとも思っています。だけど、どうしても考えるのをやめることが出来ないのです。このような方は、
「実はいまの状況に居続けたいと、無意識のうちに思っている。」つまり
「いまの状況に居続けることに、何らかのメリット本人にある。」
そういう場合も多いものです。
いったい何のメリットがあるのかを、カウンセリングで深堀りしていくことで「そうだったんだ!」気付いて貰い、それがきっかけとなって良くなっていく場合もあります。ですが、なんせ「そこに居続けることに何らかのメリットがある」ものですから、原因を深堀したところで本人はなかなか受け入れられません。そして結局、考え続けることをやめられないとなります。カウンセリングで対話の回数を重ねても、何度も同じ思考をぐるぐるめぐるので、対話だけでは良くなるのに時間も掛かったりします。

【考えること】つまり【思考すること】で、人間は多くのものを生み出し、文明を発展させてきました、いまの便利な生活は思考の賜物でもあります。思考は決して悪いものではありません。そして、そこに生きるのが現代人です。
とはいえ、論理的に考える力が良しという教育を受けて育つ現代人は、あまりにもたくさんの思考が溢れた現代において、あれも考えなきゃこれも考えなきゃよくよく考えなきゃと、無意識のうちに思考し続けることを自分に課してしまっています。ですが、思考し続けるということは、自分を傷付け続けるということにもなりかねない、諸刃の刃なのです。

仕事上、思考が必要な場面はどうしても出てきます。だったらプライベートな時間で、古代人に戻る時間を作ってみてはどうでしょうか。
古代人は何を大切にして生きていたのかというと、思考ではなく【感覚】です。感覚とは視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚、この五感で感じるものです。本来人間は、自然から与えられる感覚を大事にして、自然と共に生きていました。なのに、文明の発達のために思考を優先するあまり、感覚をないがしろにしてしまいました。そして、こころが苦しむ状況を作り出してしまったのです。この弱くなってしまった感覚を呼び覚まして、思考に傾き過ぎてしまった状態を引き戻し、感覚と思考のバランスを取るのです。

山・海・川・湖・公園・広場・林・畑・温泉・キャンプ場、何でも良いので、とにかく自然のある場所へ行ってみてください。自分ちの小さな庭でも良いのです。そこで、

あなたの目に入ってくるもの…波の動き、山の緑、土、空、雲、花、虫
あなたの耳に聞こえてくるもの…波の音、川のせせらぎ、鳥の声、セミの鳴き声、葉擦れの音
あなたの肌に触れるもの…砂の感触、土の感触、風の感触、水の感触
あなたの鼻に匂うもの…海の匂い、土の匂い、緑の匂い
あなたの舌が味わうもの…舌に触れた水の味、野イチゴや野草の味

あなたに向かってやってくる感覚を、感じてみましょう。ただ感じるだけです。ここで感覚についてああだこうだとジャッジをしないようにします。
例えば何かの花を見て、
「これはひまわりかな…いや違うな…なんの花だろう?」
例えば鳥の声を聞いて、
「これはウグイスですな。」
そういうジャッジをしないようにするのです。自然から確かに何かを感じている私、それを言葉で表現する必要はありません。言葉で表現しようとした瞬間に、思考に傾いてしまうからです。

また感覚を感じている最中に、思考や感情が沸き起こる場合もあります。
例えば海を見て、
「そういえばこの海、別れた彼氏と見たんだった…彼とは辛い別れをしたなあ…あいつがあの時あんなことするから…なんかムカついてきた。」
そうやって沸き起こってきた思考や感情は、つかまえず、そのままほおっておきましょう。
「あー思考が出てきたな。」
それだけで良いのです。

とにかく自然から受け取る感覚に集中すること。人間は本来そうやって自然を大事にして自然と共に生きていたので(特に日本人はそうですね)、感覚を呼び覚ますのに自然はよい相方なのです。
そうやって自然の中に居る時間を、できるだけ長くとります。できたら週に2~6時間。ただ、時計を見て「よし、今日は2時間居るぞ!」と決めるのではなく、それも自分の感覚で決めてください。もちろん、スマホの電源は切っておくこと。

自然とともに生きる感覚、つまり人間本来の姿である古代人として生きる感覚が呼び覚まされてくると、思考ばかりに偏ってこころを傷付け続けていた状況が、少しずつ減っていきます。感覚と思考のバランスが整ってくるからです。

ちなみに私は、とあるストレスを考えて考えてがひどい逆流性食道炎になり、胃が痛くて食事が摂れなくなった過去があります。体重が1か月で8キロ減少し、急激な体重減少で甲状腺の機能まで低下してしまいました。薬を飲んでもなかなか効かず3カ月経過。主治医に言われた一言が、
「あなたの治療は自然のある場所に行くことだよ。」
あの一言のおかげで、今も元気にこうやって仕事をしております。

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