嫉妬するきもち

【嫉妬】という感情の奥には、「本当だったら私が受けるはずだった恩恵を、他人に奪われるかもしれない」という気持ちがあります。そしてさらにその気持ちの奥には「奪われて孤独になるかもしれない」という、恐れの気持ちがあります。

嫉妬するなんてみっともない!と思っているのに、一瞬のうちに「あいつ許せない!」というような怒りや憎しみに飲み込まれてしまう…嫉妬が起きると、無意識のうちに「相手を破壊してしまおう」というような人格に変わってしまいます。そうやって「相手を破壊して排除する事で自分への注目を取り戻す」ということを自動的にしてしまうのです。勿論、本人が意識して「自分だけに注目して欲しい」なんて思っていません。ですが、嫉妬は動物的な反応ですから「奪われる」ということに、無意識に反応してしまうのです。

ですが、相手を破壊するという事は、人間関係を破壊するという事。人間関係を壊してしまうので、結局は本人がいつも孤独になってしまいます。孤独を恐れて嫉妬しているのに孤独になってしまう…という、負のループに陥ってしまうのです。その強烈な孤独感からメンタル不調を発症してしまい、自分でも何が原因なのか分からずカウンセリングにいらっしゃる場合もあります。

嫉妬が起きている時、本人には嫉妬をしているという自覚はなく、むしろ
「私は正しい」
「私は相手の間違いを正してあげている」
という意識さえ持っています。そこをカウンセラーに指摘されると「私は嫉妬なんかしてません!」と仰って、カウンセラーを誹謗中傷される方もいます。だけどカウンセラーを攻撃したからといって孤独感は消えないし、不調も良くなりません。

嫉妬のメカニズム

嫉妬というのは一見自分より優れている人に対して向けられると思われがちですが、実はそうではありません。いくら自分より良い境遇の相手だからといって、誰でも彼でもに嫉妬する訳ではないのです。
嫉妬を引き起こすには2つの条件があります。
ひとつめは「相手のことを、自分より下だと思っている」こと。
ふたつめは「下のはずの相手が、自分より優れたものを持っていたり褒められたりする」こと。この2つの条件が重なって嫉妬の発作が起こるのです。

そう考えると、親は自分の事を子どもより上だと思っているので、親子関係というものは実は嫉妬の温床ともいえます。夫と娘が仲良しなので、妻が嫉妬して無意識のうちに娘に意地悪をしてしまうなんて事が起こります。
また職場では、自分より若い後輩の事を「自分より経験が無い」「自分より知識が無い」から下だと無意識のうちに思っているので、その下のはずの後輩が上司に優しくされたり褒められたりしているのを見ると、「私の方が上なのに!」と反射的に嫉妬が起こり、後輩にイライラして冷たくしてしまう、なんてこともよく起こります。

嫉妬はみっともなくはありません。嫉妬は動物的な反応ですから、誰でもしている当たり前のことなのです。呼吸と同じです。ですから、もし誰かに対して批判したくなったり、攻撃的になったり、怒りが止まらなくなったら「もしかしてこれって嫉妬かも?!」と気付いて下さい。気付くだけで何もする必要はありません。気付くだけで嫉妬は自動的に収まります。

新入社員あるある

産業保健師という職業柄、多くの新入社員の相談にのってきましたが、その中であるあるなのが
「私は周りの同僚に比べたら仕事が全然出来ないんです。いつもミスして先輩に怒られてばかりで。みんなに迷惑をかけて。私は本当にダメなんです。」
という相談です。果たしてこの新人が仕事が出来ないのは、本当に能力が無いからなのでしょうか?

「とにかく何をやってもダメで先輩に怒られる」という状態が続いて1年経過。
そして新しく新人が入ってきます。そうすると、今度は新しい新人が先輩に怒られます。その時に、当の本人はどうなっているかというと
【何故かミスをしなくなり、ミスをしなくなるから先輩に怒られなくなり、怒られなくなるから伸び伸びと仕事が出来るようになり、伸び伸びと仕事をしているからミスをしなくなる】
という好循環に入るケースが沢山あるのです。

勿論、1年経って仕事を覚えて仕事が出来るようになった、という理由もありますが、実はここに、嫉妬の心理状態が隠されている場合があります。
嫉妬を引き起こす条件に、
「相手のことを、自分より下だと思っている」
ということがありましたね。つまり、新人は何も出来ないが故に、先輩にとっては自分より下とみなされて、そこに居るだけで嫉妬を起こさせやすくなるのです。嫉妬の攻撃をもろにくらってしまうのですね。
そして、先輩の嫉妬を恐れて謙虚にすればするほど「自分より下」だとみなされて、さらに嫉妬の攻撃を受けます。攻撃が続くと劣等感を持つようになり、その劣等感のせいでますます弱者になってさらに嫉妬される、という悪循環に陥っていきます。
ところが、「新しい新人」というさらに下の者が入ってくると、代わりに嫉妬の攻撃を受けてくれるので、劣等感が無くなり本来の自分に戻ることが出来た、という事なのです。

参考文献:消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法 大嶋信頼 著

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